日経社説をはじめからていねいに

日本経済新聞朝刊の社説を要約し、そこに自らの考察を加えます。

大学入試問題の解答例公表を受験生のためにも早期に実現せよ

世界同時株安で問われる政策協調

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26616930W8A200C1EA1000/

要約

米国を起点とした世界同時株安が進み、日経平均株価も昨年10月以来の安値となった。今回の株安は「適温」経済の終わりを示すのか、急激に上昇した相場の一時的な調整に留まるのかは見極めが必要だ。だが株価下落が急激で長期化すれば、消費者や企業の心理を冷やし、経済に悪影響を及ぼしかねない。各国の政策当局は、保護主義貿易の牽制や通貨摩擦の回避も含めて国内の経済政策を再点検すると同時に、政策協調を緊密にするべきだ。

大学入試の透明性を高めよ

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26616950W8A200C1EA1000/

要約

阪大と京大で、昨年の入試の出題ミスが相次いで発覚した。大学には解答例などの早期公表が望まれる。出題ミスへの対応が遅れるのは、作問・解答の点検を大学内部でのみ行い解答例を公表していないからだ。アドミッションポリシーを実現する手段である入試には、各大学が受験生に求める能力や意欲を広く社会に発信する教育的な意義・役割もある。作問や解答の点検を担当する教員の負担軽減や、支援体制を整える対応も重要だ。

要約

この問題は、現在大学生である自分には興味深い話題です。自分はこの問題を受験生目線から考えてみようと思います。

大学が解答例を公表しないと受験生にとって不利益となる理由は大きく3つあります。

一つ目は、今回のような出題ミスで今後の人生が大きく狂ってしまうかもしれないこと。これが一番大きな問題です。

二つ目は、過去問を解いた時に解答が過去問出版社によって大きく異なることがあるということ。大学側が解答例と、解答に必要なエッセンスを発表してくれれば、受験生側も混乱なく勉強に励めるのではないでしょうか。

三つ目は、採点がブラックボックスの中で行われているという不安感を払拭できるということ。受験に失敗した時に滑り止めに進学するか浪人するか、受験でどれだけ得点できたかで決めようとする受験生も多いと思います。そんな時、公平に採点されていることが安心できるならば、自分の進路決定もより満足できるものとなると思います。

 

普天間基地の辺野古移設がいよいよ現実味を帯びてきた

米の核戦略見直しに映る保有国の不作為

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26554430V00C18A2EA1000/

要約

米のトランプ大統領核戦略の指針である「核体制の見直し」を発表した。領土拡大を狙い「核大国」の地位を誇示する中ロや核開発を進める北朝鮮などの世界の安全保障環境を考えれば、米が一定の核抑止力を保持することは日本の国益を守る面でも必要である。だが、今回の「核体制の見直し」は世界の核軍拡を進める恐れが有り、核軍縮を怠った核保有国の不作為を示したとも言える。米ロや中国は今こそ誠実な核軍縮に取り組むべきだ。

普天間移設で理解得る努力を

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26554450V00C18A2EA1000/

要約

沖縄県名護市長選で、与党推薦の辺野古移設容認派の渡具知武豊氏が初当選した。政府はこれを踏まえて同県宜野湾市普天間基地の名護市辺野古への移設工事を進めたいが、地域住民からの反対は根強く、丁寧な説明が求められる。また、辺野古に移設するとしても沖縄が担っている重い基地負担を同国民で分かち合うかなどの議論は進んでいない。「県民の気持ちに寄り添う」という首相の言葉を実行し、着実に移設につなげる必要がある。

持論

今回の沖縄県名護市長選は、事実上の辺野古移設容認派である渡具知武豊氏が勝利しました(事実上というのは、今回の市長選で渡具知氏は基地移設問題について触れずに地域経済の立て直しなどを主に訴えてきたからです)。これで、普天間基地辺野古移設はいよいよ本当のものになりそうな気がします。

しかし、一つ気になることがあります。それは、地域住民の基地移設反対の声が多いことです。6割以上の住民は移設に反対しています。

選挙に勝ったからといって政府は強引に基地移設を進めるのではなく、米軍関係者による犯罪、基地による環境問題、米軍機の墜落問題などに対して徹底した策を用意する必要があります。

 

日本の名産品の輸出拡大に弾みをつけよ

食品の地域ブランドの保護を混乱なく

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26511200T00C18A2EA1000/

要約

日本とEUのEPAに基づき食品のブランド名称であるGIを相互に保護する具体策が定まった。欧州ブランドの国内市場での保護も混乱なく進め、日本の産品を欧州域内で模造品による名称使用から守るために、政府は欧州のGIを侵害しないよう企業等に対応策を丁寧に説明するとともに、地域ブランドを守る環境を国内でも整えるべきだ。また、各産地も地域の食品ブランドの高い付加価値を認識して海外市場の開拓につなげることが求められる。

持論

日本の名産品は海外においても高い評価を得ています。そのような日本産品を保護してブランド価値を高めることは非常に重要であると思います。

ですが、ただ名産品を保護すればいいというわけではありません。日本の農産品や特産品が海外で売れるには、政府による積極的な輸出支援が必要であると考えます。政府は2020年までに農産品輸出額を年1兆円以上とする目標を掲げましたが、達成できるかどうかは不透明です。

特産品輸出に弾みがつきそうなこの決定。ぜひとも政府には成長戦略の一環として最大限に活用していただきたいと思います。

 米株安は適温経済の転機か

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26511220T00C18A2EA1000/

要約

ダウ工業株30種平均が110ヶ月ぶりの大きな下落幅を記録した。米国経済は緩やかな成長が続く一方、低インフレでFRBが金融引締めを急がない「適温」の状態にあったが、米株価の急落は適温経済の転機を示す。アジアや欧州の市場など、米金利の上昇で実体経済に悪影響が出かねない。パウエルFRB新議長は世界への影響も考えて金融政策を運営すべきである。また、短期的な株価の乱高下に惑わされず長期の視点を持つことも欠かせない。

重度の要介護者へ支援が行き渡るインセンティブを

この改定では介護保険の未来が危うい

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26451490R00C18A2EA1000/

要約

4月に改定される介護報酬の総額は0.54%増が決まったが、一連の見直しはまだ甘く一層の改革が必要である。今回の見直しの柱は利用者の自立支援や重度化防止につながるサービスの後押しで、リハビリなどを重視した。だが今回の加算は僅かであるのに加え、介護費用の膨張を抑える策は不十分だ。真に必要な人に質の高いサービスを届けるために、公的保険のカバーする範囲の変更や国民負担の増加など、制度の根幹に切り込む改革が必要だ。

持論

ここで私が注目したいのは、今回の改正で明示された”心身機能の維持・改善で一定の成果をあげたデイサービスに報酬を加算する仕組み”についてです。

これには以前から指摘されているように、軽度の要介護者を優先的に受け入れて報酬の加算を目論む介護業者が出てくる恐れがあります。より介護を必要とする重度の要介護者にこそ手厚い介護を与えられるようにする、そのようなインセンティブが必要ではないでしょうか。

名門ゼロックス買収の教訓

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26451510R00C18A2EA1000/

要約

ゼロックス富士フィルムHDの傘下に入ることとなった。ゼロックスは近年、多角化の行き詰まりによって事業の新陳代謝に失敗して成長戦略を描き切れず、「モノ言う株主」の攻勢にも晒されていた。しかし、買収についてのゼロックス株主からの承認取り付け、日本側のゼロックスへの企業統治の徹底、同社の新たな成長戦略など、今後の課題も多い。ゼロックスの人材や技術を活かして新たな成長市場を切り開けるかどうかが問われる。

日本もインフラ整備を積極的に進めよ

針路より実績を強調したトランプ演説

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26395270R30C18A1EA1000/

要約

トランプ大統領は、初の一般教書演説で経済面など政権の実績を誇示し、「安全で力強く、誇りある米国を建設する」としたが、課題は残る。トランプ氏の表明する1兆5000億ドル規模のインフラ投資は財源も投資計画も曖昧で、トランプ流の楽観論で米国が偉大な国として復活できるかは不透明だ。一方、同氏は「米国第一」を訴えつつも同盟国を重視する姿勢も示した。北朝鮮の脅威に直面する日本では、安倍首相との連携を期待したい。

持論

トランプ氏のインフラ投資政策は確かに景気過熱やそれに伴う国債長期金利引き上げを誘発する恐れがありますが、自分はトランプ大統領のインフラ投資政策を支持します。なぜなら、米国インフラの老朽化が進んでいるからです。

米国土木学会(ASCE)の調査によると、アメリカのインフラは脆弱ですぐに修繕が必要です。

Grading Infrastructure | ASCE's 2017 Infrastructure Report Card

例えば、ダムや飲み水や道路、交通機関の評価はD(不十分、危険性有り)で、橋の評価はC(劣化していて注意が必要)となっています。安全性や経済、国民生活の安定のためにもインフラ整備が必要であろうと考えられます。

日本についても同様のことが言えると思います。高度経済成長期に多く建造された道路(高速道路を含む)や橋などで老朽化が著しく進んでいます。今後は政府もインフラ投資に積極的になるべきではないでしょうか。

生活困窮者への就労支援急げ

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26395290R30C18A1EA1000/

要約

政府が今国会に提出する生活困窮者自立支援法生活保護法の改正案は、生活保護一歩手前の人への就労支援を通じて自立を促すのが最大のポイントだ。生活保護費の抑制や人手不足の日本経済にとってもプラスであるため、実効性のある仕組みを期待したい。また、政府は自治体が地域の状況に応じて活動を工夫できるように工夫するべきである上、制度維持のためにも生活保護費の約半分を占める医療扶助への徹底した見直しが必要である。

 

日中の経済協力を推進せよ

日中の信頼醸造へ根気強く課題解決を

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26344820Q8A130C1EA1000/

要約

世界2,3位の経済大国の日中両国の首脳が相互訪問し意見交換することは経済面や安全保障面で重要だが、尖閣諸島接続水域に中国の原子力潜水艦が潜航したまま通過した問題など、偶発的衝突を誘発する中国軍の行動は看過できない。日本はこの問題を早急に正すべきだ。また、日中衝突を防ぐための日中防衛当局間の「海空連絡システム」の早期運用開始も大切である。日中平和友好条約締結40年の今こそ、両国関係改善のときである。

 

出遅れが目立つ遺伝子治療

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26344840Q8A130C1EA1000/

要約

欧米に倣い日本も最新の研究結果を踏まえて遺伝子治療の利用を推進するべきだ。安全性への不安などから、日本では臨床試験も製薬も進んでいないが、遺伝子治療はがんの免疫療法にも役立つ。安全確認は重要だが、遺伝子治療を過度に恐れては海外との差は広がる一方だ。政府は、最新の研究結果を国民に提供して正確な理解へ繋げるとともに、薬の効き目に応じて金額を変えるなど高額な遺伝子治療に対する柔軟な薬価設定が必要である。

 

持論

診療報酬改正の薬価引き下げ決定時も感じましたが、製薬会社の観点から見ると薬価引き下げは製薬会社の新薬開発意欲を著しく削ぐのではないかと思います。ですが、薬の効き目に応じて薬価を変えるというシステムには、製薬会社にもっとよく効く薬を作ろうと意欲を出させるインセンティブが働くので、これには賛成です。

日本では確かに遺伝子治療があまり進んでいないかもしれません。また、日本では再生治療を始め様々な医療分野で世界に遅れをとっている感があるのは否めません。特に臨床分野が遅れています。世界を席巻する医療を、官民が一体となって日本が生み出せるようになることが急務であります。

 

仮想通貨、安易に手を出すべきではない

仮想通貨取引所の安全性を再点検せよ

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26293780Q8A130C1EA1000/

要約

仮想通貨の国内大手取引所コインチェックで約580億円相当の仮想通貨NEMが流出した。同社は顧客の資産を保護する基本的な防御システムに不備が有り、とりわけ「秘密鍵」の分散管理が疎かであった。仮想通貨全般への信認低下を防ぐためにも、取引の安全性や透明性を担保する再点検が不可欠である。金融庁はシステム再点検を含め厳しい措置を取る必要があるが、投資家の保護や情報公開などで民間主導の自主規制の強化も重要だ。

 

持論

ビットコインをはじめとする仮想通貨は元々、消費者の決済手段として導入されたものですが、今では値上がりを見据えた投機としての取引が主流です。投機を悪いとは思いません。しかし、安全性の高い取引のためにも自分は大きく三つのことが重要であると考えます。

一つ目は、仮想通貨業者が一体となって統一的な投資家保護の業界ルールを策定すること。過熱する仮想通貨市場では、いかに新規客を取り込むかが各業者の課題となっていますが、それよりもまず業者が競争ではなく協力によって業界全体をまとめるべきだと思います。

二つ目は、仮想通貨業者への管理システム構築の徹底命令。証券取引に比べて仮想通貨は管理システムに資金が投入されておらず、全体を管理する一元的な管理者がいないのも問題です。ブロックチェーンという技術の特性を生かしつつ安全性を確保するには、行政の管理も必要です。

そして三つ目は、利用者自身のリスク認識。儲かるからという理由で安易に手を出すのではなく、リスクを認識した上で取引を行うべきです。コインチェックがNEM流出を公表したあと本社前に資金を失った投資家たちが集まったそうですが、仮想通貨へのリスク認識が甘かったのではないでしょうか。安全性が確実ではない仮想通貨取引をする以上、リスクは覚悟の上です。

都市部の農地を守るために

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO26293800Q8A130C1EA1000/

要約

大都市市街地の「生産緑地」に対する新たな税制優遇措置が決まった。後継者のいない人も農地を保有し続けやすくするため、都市部の農地保全効果を期待できる。都市部の農地は避難場所や住民の交流の場として重要で、農地が住宅地に転用されると古い住宅は更に空き家率が高まる一方、生産緑地に指定されている土地で農業をしない課税逃れも横行している。農地利用に関して、行政がしっかりと事業計画を確認することが欠かせない。